真の当事者目線の福祉のために
知事は今月、神奈川県当事者目線の障害福祉推進条例を提案。内容は、障害者が福祉サービスを利用する場合、これまでは利用者の安全を優先する管理的な支援であったものから、本人の意思を尊重し、本人が望む支援を行うために「当事者目線」に立った意思決定支援を促すもの。
それは障害者福祉のレベルを一段階上げることであり、共感し同意します。しかし、その実現には、行政の理解と協力が不可欠と考えます。
複雑で高度な課題
この当事者目線というのは、とても高度な課題です。意思決定・自己決定の支援は、けっして容易くありません。人の主観を他人が客観的に読み取ることは、とても難しいことだからです。
また、求める福祉サービスについて、当事者とそのご家族とでも違いがあります。そのご家族が親か兄弟姉妹かでも違いがあります。これまでの生活で当事者が我慢をしがちだった場合、本音・本心を出さないことも察せられます。また提供すべきサービスについて、現場の支援員と行政側とでも考え方にズレを感じることもあります。
人間関係が重要
現状、国の支援員の配置基準では、施設で提供出来るサービスに限界があります。優秀なベテラン支援員でも、後から「自分の支援はズレていた、間違っていた」と思い返すことは多々あること。それは、支援員として利用者に日々接しているとは言え、現行の配置基準では数多くの業務と時間に追われ、ひとり一人とじっくり向き合えないことにもあります。利用者も、寄り添ってくれなければ本心を表現してくれないでしょう。
当事者目線の福祉の実現には、何より利用者と支援員との相互コミュニケーションのための「時間の確保」が必須。もちろん、理想の人員配置はマンツーマン対応ですが、現在の国の基準よりも、少しでも人の配置を拡充することで、コミュニケーションがさらに充実出来ればと考えます。
今回の条例提案に合わせて、理想の福祉に近づけるための本県独自の人員配置基準=支援員の配置の拡充を、私から知事に提言。そうしない限り、「当事者目線」とは言うものの、そう簡単なことではなく、言葉遊びになりかねませんから。